シェンゲン協定と欧州連合
ノルウェー、アイスランド及びスイスを除く全てのシェンゲン協定加盟国は、欧州連合のメンバでもある。
一方EU加盟国のうちの2ヶ国 (英国及びアイルランド)は、シェンゲン協定に調印しないことを決めた。英国は国境検査所を維持し続けることを望んでいる。 アイルランドは、シェンゲン協定と同様な内容を持つCommon Travel Area (仮訳:共通旅行区域)に関する協定を英国と結んでおり、 もし英国がシェンゲン協定に調印するならばアイルランドも同調すると述べている。 またどちらも国民IDカードを発行していないこともあって、 協定に加盟することはほとんど利点がないのである(デンマークも国民IDカードを発行していないが、 全国民は付与されたCPR (Central Person Register) 番号により、様々な行政サービスを受けることができる)。また英国は、 歴史的に生きた動物を持ち込むことに対して厳格な規則を運用しており、国境検査を緩めようとはしなかった‐ イギリス諸島は他のほとんどのヨーロッパ諸国と違い狂犬病から免れている。
しかし一方では、英国又はアイルランドに在住するEU非加盟国の国民がEU内を移動するためには、 英国又はアイルランドと、シェンゲンの査証を別々に取得しなければならず、 もし英国とアイルランドが協定に調印すれば大きな便益を受けるであろう。 なお英国とアイルランドは2000年5月29日、 シェンゲン情報システムの共用を開始した。
スカンジナビア諸国は、1952年以来シェンゲン協定と同様な自由移動に関する枠組みを持っていた。 これが、EU非加盟国であるノルウェーとアイスランドが協定に調印した主たる理由であった。
もともとヨーロッパは単一市場の実現を目指しており、シェンゲン協定は1985年の欧州共同体における域内市場統合計画に盛り込まれていた人の自由移動に関する一部であった。 しかし英国などの反対から、EU加盟国間での合意が形成できなかったために、 これに不満を覚え早期実現を望む国々がEUとは独立に協定を作って調印したものである。
1997年10月2日に調印され1999年5月1日に発効したアムステルダム条約では、 欧州連合条約の枠組みへと、シェンゲン協定を組み込むこととなり、 事実上シェンゲン協定はEUの一部となった (当時の英国労働党政権が反対を撤回)。中でも欧州連合理事会が、 シェンゲン合意の下で設けられた執行委員会に取って代わったことが特筆される。EUへの加盟希望国は、 承認を受けるためには、EU外への国境政策に係るシェンゲン協定の基準を満足せねばならない。 また、EU加盟国でないシェンゲン加盟国にとっては、 このアムステルダム条約の結果、今後のシェンゲン協定の方向付けに関わる機会が少なくなっている。実際にそれらの国の意見は、 目の前に提示されたものが何であれ賛成するか、又は協定から離脱するかの二つに限定されてしまった。
なお、シェンゲン協定は欧州連合条約の一部となったにも関わらず、実際にはいかなるEUの機関によっても採決されていない。 このため、協定の民主主義的な説明責任に関するいくつかの懸案が存在する。実際、ギリシャは協定に調印するに先立ち、 シェンゲン情報システムの合法性についての問題を提起し、個人情報への侵害ではないかと示唆した。
また、2005年5月27日に、 ドイツプラム(Prüm) において、参加した7ヶ国によりシェンゲンIII協定が調印された。 ドイツ、スペイン、フランス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア及びベルギーが調印したこの協定は、 シェンゲン協定とは別のものであるが、EUの枠外での共同での取り組みとして、 アムステルダム条約以前のシェンゲン協定に非常に近い枠組みを持つ。この協定は、2004年3月11日に発生したスペイン列車爆破事件後にEUで議論された、 Principle of Availability (仮訳:可用性の原則)、つまり各国の警察機関の間での全ての情報交換を前提としている。DNA特徴や、 指紋、車両、テロリストの攻撃に関する情報交換や、航空警察官導入、 シェンゲン協定では緊急追跡時に限られていた警察の国境横断からの大幅な権限拡大などが盛り込まれている。
(ウイキペディアより引用)
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